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台東区立朝倉彫塑館 |
June 21, 2006 [ 谷中 ] |
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今日は台東区立朝倉彫塑館(あさくらちょうそかん)をご紹介します。
JR・京成線日暮里駅北口を出て、御殿坂を上り石屋さんと雑貨屋さんの間を左折するとすぐ朝倉彫塑館の看板が見えてきます。駅からの所要時間は5分ほど。谷中霊園のまわりにお寺さんが点在し、古き良き下町の風情が感じられます。
到着すると担当学芸員の本田弘子さんが温かく出迎えて下さいました。
本田さんのお話によると、朝倉彫塑館は、彫塑家朝倉文夫氏(1883-1964)が住居兼アトリエとして自ら監督・設計をし、7回の増改築を経て昭和10年(1935)に現在の形になり、また朝倉氏はこの住居兼アトリエに朝倉彫塑塾を作り、数多くの若い彫刻家を育てたそうです。
明治35年(1902)、19歳だった朝倉氏は彫塑家だった兄渡辺長男(わたなべおさお)を頼って上京し、谷中にあった兄の家に身を寄せます。当時寺町だった谷中は、東京美術学校(現東京芸大)が設立された明治以降、間借りをして学校に通う学生さんが増え、朝倉氏は翌年東京美術学校彫刻選科に入学し、卒業と同時に家を出て、谷中に居を構えたということです。
それではさっそく朝倉彫塑館を探検してみましょう!
目の前に現れたのは、うっそうと茂る木々の間から見える真っ黒な外壁です。
屋上の中央にはなんと!今から砲丸投げをしようと球を持って腰掛けている人が!!この彫塑のタイトルもズバリ「砲丸」だそうです。
もう外観からショッキング!!
昭和10年にはすでにこのような異彩を放つ建物が建っていただなんて!当時周辺に住んでいた人たちからは、
「あの家はオバケが出るオバケ屋敷だ・・」
と囁かれたこともあったようです。この外観ではこんなウワサが立つのもムリありません。
もしかしたら今でも草木も眠る丑三つ時、屋上の彫像君はこっそり谷中の町を走り回っているかも!?
では次にアトリエにお邪魔してみましょう。
アトリエは3階部分まで吹き抜けになっていて、天井までの高さ8.5メートル、床面積は175平方メートルあります。北からの光が一番安定していることから、北側に大きな窓が作られているそうです。とてもスケールの大きいアトリエで、建設当時は「東洋一のアトリエ」と賞されたとか。今でも個人がこのように広々としたアトリエを
持つことは至難のわざでしょう。
朝倉氏はこのアトリエで「墓守」や「仔猫の群」など多くの彫塑作品を制作し、彫塑家として揺るぎない地位を確立していきます。
さあそれでは次に中庭です。
これはアトリエを抜けた渡り廊下から庭を見たものです。奥には居間が見えます。
この庭は「五典の水庭」と呼ばれ、地下のわき水が利用されているそうです。取材に伺った日は雨が降っていたのですが、雨粒で樹木がキラキラ光り、大きな石(写真左)が雨水を吸収し優しい光を放っていました。静かに雨が降るこの庭を眺めていると、肩の力が抜け、心が安らぎます。
この庭には一年を通じて白い花が咲く木が植えられています。
白い花を好んだ朝倉氏は、白を素直さや純粋さに例え、生涯そういった気持ちを持ち続けたいと考えていたそうです。
固定観念や先入観にとらわれることなく、常にまっさらな気持ちで制作活動、ひいては人生と向き合いたいという、氏の考えがこの白い花に込められているのですね。しかし朝倉氏はこの庭に1本だけ赤い花が咲く木を植えています。その赤い花とは百日紅(さるすべり)の木だそうです。
「物事は満つれば欠くる」の喩えもあり、完璧を避けるために百日紅の木が植えられたというのです。「完璧だ!」と思った瞬間に、驕りの心が生まれるという自分に対する戒めの意味が込められているのですね。うーん深い!
最後に屋上に上がってみましょう。
朝倉氏は彫塑塾として若い彫刻家を指導していく中で、園芸を授業の一環として重要なものだと考え、屋上は氏が亡くなるまで菜園として利用されていたそうです。
戦時中はこの園芸の授業が結果的に自給自足という形になったそうですが、朝倉氏は自然と触れあい、食物を育てることが、より充実した制作活動につながると考えていたようです。
現在菜園だった場所には、色とりどりの花が植えられていますが、大きなオリーブの木が当時の面影を残しています。屋上にこんな立派な木が植わっているなんて信じられません!
「今年はきれいに花が咲いたので、オリーブの実がたくさんなるかもしれません。とても楽しみです。」
と本田さんがにこやかに語ってくださいました。
駆け足で朝倉彫塑館を探検してみましたがいかがでしたか?要塞のような外観からは想像もつかないようなゆったりとした空間が中には広がっていました。外観からは「何か人と違うことをしてやろう」という野心を、そして中に入ってみると、「人として芸術家として常に真摯であれ」という朝倉氏のひたむきさを感じ、背筋が伸びる思いがしました。
朝倉彫塑館には、今日ご紹介した以外にも、まだまだステキな空間、魅力的な居室がたくさんあります。10月からは企画展も開催されるとのこと、皆さんもぜひ実際に足を運んで朝倉ワールドにどっぷり浸ってみて下さい!
本田さん貴重なお話ありがとうございました。スタッフの皆様にもお世話になりました。とても楽しかったです!
※通常、館内での撮影・写生行為は禁止されています。今回は特別に許可をいただいて撮影しました。ご注意下さい。
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台東区立朝倉彫塑館 |
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入館料 一般 400円(300円)
小中学生 150円(100円)
※( )内は20人以上の団体料金
開館時間 9:30〜16:30
休館日 ・月・金曜日(祝日と重なる場合は翌日)
・12月29日〜1月3日
・特別整理期間等 |
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〒110-0001 台東区谷中7-18-10
アクセス JR・京成線日暮里駅北口より徒歩5分 |
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TEL:03-3821-4549 |
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※駐車場はございません。お近くのコインパーキング、または公共の交通機関をご利用下さい。 |
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